ドイツの詩人、劇作家ゲーテのことば「友情は花のように美しいが、果実のようにまれである」がある。ふたつの魂が一つになる、常に意見が一致するのではないが、理解し合い尊敬し合える仲であろう。その人から、裏切られた人の心の傷は一生癒えない。ジュリアス・シーザーの「お前もか、ブルータス」はレオナルド・ダビンチの次のことばを借りるまでもない。「裏切り行為は友情を破壊するものであり、裏切り者には真の友人がいないということを意味する。」
▼その人の一生を左右する裏切りにあった人がいる。五十年経った今も悪夢に悩まされている。トラウマは消えないという。目的のためなら手段を選ばないとイタリヤの政治思想家、外交官マキャベリは「君主論」で目的は手段を正当化すると言った。その目的が賭博で金を得るためなどは、ひどすぎる。 信頼に泥を塗る人の内側にある肉欲の強さは愛と信頼に楔(くさび)を打ち込む悪魔の腕力だ。
▼キリストのことば「ユダ。口づけで、人の子を裏切ろうとするのか」は裏切られた人のユダへの責めではなく、悔い改めへの慈しみの現れだ。もうひとりの弟子ペテロは三回イエスを知らないと言った。しかしイエスが彼にかけられたことば「きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは、三度わたしを知らないと言う」とのおことばも人への思いやりであった。だからペテロは外に出て激しく泣いた。ユダにはキリストのことばが馬耳東風だった。ペテロに習おう。
著者紹介
- 聖書と日本フォーラム会長。聖書日本キリスト教会・登茂山の家の教会牧師。三重県志摩市在住。
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