イノシシとマムシが隣人となって十六年。大阪のコンクリートジャングルから伊勢志摩の英虞湾に突き出た半島に移住しての年月は短く感じても肉体的には確実に衰えてきた。六〇代前半は暑さなど気にもせず、林の緑、満天の星空がエアコンであった。が昨今の暑さは加齢による身体的抵抗力の衰えが体に堪える。直射日光に悲鳴をあげる。若さは強さと忍耐の素をもち冒険を恐れない。若者が人生を呟くなどもったいないこと甚だしい

▼甘いブドウ酒は寒暖の激しい山形県にできるという。徳川家康、豊臣秀吉は若い時に艱難辛苦を味わった。現代の恵まれた日本では、大器晩成は死語となった。若者はインスタントラーメンのようにすぐに成果を出そうとする。挫折の理由を親や環境、他に転化する

▼つまらぬ番組を垂れ流すテレビなどなかった昔、勉強部屋もなくひとり集中する道具は読書であった。通学電車の中、家族が出払っている合間をぬって一間しかない部屋を独占し読書に耽った若者がごろごろいた

▼若さは辛苦に耐える資質を心と体に有する。「いのちに至る門は小さく、その道は狭く、それを見いだす者はまれです」イエスは若い時に断食した。老いての断食は若い時と違う。

著者紹介

畠田 秀生
畠田 秀生
聖書と日本フォーラム会長。聖書日本キリスト教会・登茂山の家の教会牧師。三重県志摩市在住。