「金銀はない。私にあるものを上げよう。ナザレのイエス・キリストの名によって、歩きなさい」と言った人がいた。私にも金銀はない。口の中に金歯もない。結婚して生まれた育ち盛りのふたりの子どもにお菓子を買ってやることも出来ず、米が買えない時もあった。年金暮らしのわが身もこれからどうなるかわからない▶明日のことは明日が思い煩うという金言もある。33歳の時に属していた団体から給料が半分にされ、40歳の時に全額カット、放り出されて天を仰いだ。が何とか年金納入を先延ばしにし、払えるようになってやっと納めたおかげで今の生活がある。明日を思い煩ったおかげで今があるのも事実である▶高学歴、高収入、高身長というのが若い女性の伴侶男性への望みらしい。金銀のない者が口角泡を飛ばす「そうじゃない!」は、むなしく響く。経済最重視の価値判断基準だけが国会の論議の的になっているのは何処かおかしいと分っていても、正論が隅っこに小さくなる▶だから正論が持ち味の同志が恋しい。来月40年以上親交を温めている友らに会う。同じ傷のほころびをいたわり合える友こそ最高の財産か。

著者紹介

畠田 秀生
畠田 秀生
聖書と日本フォーラム会長。聖書日本キリスト教会・登茂山の家の教会牧師。三重県志摩市在住。