年の初めに愛を考えたい。老人が増え、昨年中に百歳以上の高齢者が過去最多9万2139になった。60年前、昭和38年では153人だったのに。一方、多くの人の愛が冷えている。不法がはびこり、己が腹を神とする者が厚顔無恥に闊歩している時代だ。「老人は愛されねばならない。尊敬されねばならない」

▼老人は長い人生での経験を生かして社会に、若者に積み上げてきた知恵を伝えられる。健康を維持し、自立した生活を求める「老人は一日をもって十日として日々楽しむべし、常に日を愛惜して一日もあだに暮らすべからず」(貝原益軒)に胸を張るならば百歳の輝きはまぶしい。

38年も死んだような状態となっていた病人にイエスは「よくなりたいか」と問うた。愛され、面倒をみてもらうことばかりを求めていたその人は、だれも病院に連れて行ってくれる人がいないのですと愚痴をこぼした。するとイエスは「床を取り上げて歩きなさい」と言われた。その人は床を取り上げて歩きだした。

▼人生をあきらめている人がいる。諦観を教えたにせ預言者のことばで、満足しようとする者が多いのは古今東西の常。「愛する」をあきらめているのなら、私たち、百歳の長寿とその顔に刻まれた皺(しわ)の意味を悟ろう。

著者紹介

畠田 秀生
畠田 秀生
聖書と日本フォーラム会長。聖書日本キリスト教会・登茂山の家の教会牧師。三重県志摩市在住。